PCB分析

1. PCBの用途

 PCBは電気機器用の絶縁油、各種工業における加熱並びに冷却用の熱媒体及び感圧複写紙など、以下のとおり様々な用途に利用されていました。1972年より新たな製造は禁止されています。最近お問合わせの多いPCB含有量調査はビルの変圧器とコンデンサー、蛍光灯の安定器、塗膜くずです(表1)。

表1 PCB用途及び使用例
絶縁油 変圧器(トランス)用 ビル・病院・鉄道車両・船舶等の変圧器
コンデンサー用 蛍光灯の安定器、白黒テレビ・電子レンジ等の家電用コンデンサー、直流用コンデンサー、蓄電用コンデンサー
熱媒体(加熱用、冷却用) 各種化学工業・食品工業・合成樹脂工業等の諸工業における加熱と冷却、船舶の燃料油予熱、集中暖房、パネルヒーター
潤滑油 高温用潤滑油、油圧オイル、真空ポンプ油、切削油、極圧添加剤
可塑剤 絶縁用 電線の被覆・絶縁テープ
難燃用 ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂
その他 ニス、ワックス、アスファルトに混合
感熱複写紙 塗料・印刷インキ ノンカーボン紙(溶剤)、電子式複写紙、印刷インキ、難燃性塗料、耐食性塗料、耐薬品性塗料、耐水性塗料
その他 紙等のコーティング、自動車のシーラント、陶器ガラス器の彩色、農薬の効力延長剤

2. PCBの有無を判定する方法

 変圧器・コンデンサー類はキュービクル、配電盤周りに設置されている銘板の内容を確認し、日本電気工業会のホームページ又はメーカー窓口へ問い合せてください。銘板の型式等で判別が不可能な場合は、分析会社へ「PCB濃度分析依頼」を行ないます。エコアップでは、試料採取にうかがうこともできますし(写真1)、ガラス瓶、スポイト、手袋の採取キットの貸出も行っています。分析の結果基準値を超えるPCBを検出した場合、採取した試料、使用したスポイト等のPCBに汚染されたものを返却いたします。該当する電気機器とともに適切に処分してください。
 
 写真1 PCB採取
 安定器は日本照明工業会のホームページを参照してください。安定器は分解によってPCBの漏洩のおそれが高いため、蓋を開けての分析はできません。(平成26 年9月16日付け環廃産発第14091618 号)
 塗膜くずは、橋梁等建設物の錆止め等を目的として、PCB・鉛・クロムを含む塗料が使われていたことに由来します。剥離作業前に分析会社へ「塗膜くずの有害物質分析依頼」を行ってください。エコアップでは、剥離作業及び廃棄物処理に必要な含有試験と溶出試験を合わせておこないます。

PCB廃棄物の処分(分類、処理期限、処理施設)

 PCBは国の監督の下、約30年間処分がなされず保管を余儀なくされていましたが、平成16年、全国の高濃度PCBの処理を行うためJESCOが設立されました。しかし翌年、本来PCBが使用されていないはずの電気機器に、処理の目標基準を越えたPCB含有物(非意図的に混入したいわゆる低濃度PCB)が約160万台も存在することが明らかになりました。このため環境省は従来の都道府県知事による処分業の許可に加え、廃棄物処理法に定められた無害化処理認定制度(大臣認定制度)を適用し、民間の産業廃棄物処理施設を活用して処理を進めることにしました。
 当初PCB廃棄物処理基本計画では、平成28年7月までに処分を終わらせる予定でしたが、処理期限が延長されました。定められたエリア毎の処分期限が定められ、静岡県では下記のような処理施設、処理期限となっています。

表2 PCB濃度・対象物による区分と処理
区分 PCB濃度 対象物 処理期限 処理施設
高濃度 5000ppmを超えるもの 変圧器・コンデンサー等 平成34年3月31日 JESCO豊田
PCB処理事業所
安定器及び汚染物等 平成33年3月31日 JESCO北九州
PCB処理事業所
低濃度 0.5ppmを越え、5000ppm以下 PCB廃棄物 及び汚染廃電気機器等 平成39年3月31日 無害化処理認定施設等
※PCB含有量が0.5ppm以下の鉱油はPCB汚染のない廃油として処分していただけます。

 計画的処理完了期限内の1日でも早い処理完了に向けて、都道府県市では、管内の未処理PCB使用製品やPCB廃棄物を網羅的に把握するための「掘り起こし調査」を順次実施しています。

アルミナカラム液体クロマトグラフィーを用いた前処理による絶縁油中低濃度PCBの迅速分析方法

特許第4003083号絶縁油の精製方法