ダイオキシン類を分解するプラントの
実証試験

はじめに

 環境省では、土壌汚染対策の一環として、実用段階にある低コスト、低負荷型浄化技術を公募し、実証調査、技術評価を行う事業を実施し、19年度の調査結果が平成20年10月10日付で環境省報道発表資料として公表されました。全国で6社の技術のうち、調査技術が4社で、浄化技術は潟Gコアップと大成建設鰍フ2社のみでした。技術の名称は「回収熱源を利用したダイオキシン類の直接加熱+熱分解法」ですが、省エネ、低コスト、単純操作を特徴としています。特許第4003084号:浚渫土の無害化処理方法

1. 技術の原理

 本技術はダイオキシン類(DXNs)を土壌より分離する工程と、これを分解する工程とからなります。分離工程では加熱空気(450〜480℃)で汚染土壌を1〜2時間加熱することによって、DXNsを高温空気側に揮発、移動させます。次の工程では分離されたDNXsを重油バーナにより950〜1,000℃に加熱し高温熱分解する方式です。


図1 処理フローの概略図  

2. 低コスト・環境負荷低減の考え方

 高濃度ダイオキシン類といえども、土壌から分離さえすれば極微量であり、これを1,000℃の分解炉で完全分解してもエネルギーは低コストで済みます。ガスクロマトグラフの原理を応用して、DXNsの分離はダイオキシン類を沸点以下の比較的低温で蒸発させており、更に、この分離用空気は分解炉の排熱を利用して加熱するとともに、DXNsを含むガスも排熱で予備的に加熱する熱回収システムとなっているので、燃料使用量を節約でき、運転経費を抑えることができます。また、内部負荷も小さいことから、設備費が安価です。装置内部の負圧変動は少なく、汚染物質が環境へ漏出する心配がありません。低温加熱処理及び熱回収システムによりエネルギー効率を高め、CO2排出量が低減されます。

3. 実証試験の結果概要

 10,000〜20,000pg-TEQ/gのダイオキシン類を含有する焼却灰系汚染土壌を9〜160pg-TEQ/gに浄化できました。ダイオキシン類除去率は97%〜99.8%でした。運転中のトラブルや周辺環境への影響は一切ありませんでした。実用段階での処理費は約5万円/tと試算されました。

4. 本技術の適用分野

 本技術の動機は静岡県田子の浦港のダイオキシン類汚染底質を浄化するためでした。このため、平成18年度経済産業省の補助金を得て、以下の成果を報告しています。

表1 経済産業省補助事業における汚染土壌浄化実証試験成績(平成19年)
試料 ダイオキシン類含有濃度(pg-TEQ/g)
処理前 処理後
田子の浦港内水底土砂 107 1.7
化学系汚染土壌 8,900 4.4
※1 環境基準:水底土砂150 pg-TEQ/g、土壌1000 pg-TEQ/g
※2 実証実験時の排ガス出口におけるダイオキシン類濃度は0.04ng-TEQ/m3N

写真1 ダイオキシン類を分解する機械

5. 本技術の応用分野

 本技術はシアン汚染土壌の浄化にも応用できることが実証されています。350℃、1時間の加熱で土壌からシアンを揮散させ、850〜900℃で分解します。

表2 シアン汚染土壌浄化実験結果(平成21年)
試料 シアン溶出濃度(mg/L)
処理前 処理後
シアン化銀(AgCN) 4.6 0.1未満
ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム三水和物
(K4[Fe(CN)6]・3H2O)
45.6 0.1未満
ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム
(K3[Fe(CN)6])
42 0.1未満
※3 土壌環境基準:検出されないこと(0.1mg/L未満)

6. 今後の展望

 株式会社エコアップのキャッチフレーズは「土と環境の病院」としており、環境の検査・計測とそこから得られる知見を基に、汚染された環境を修復治療することを社会的使命と考えています。お客様の処理量、設置サイズなどご要望にそったプラントを設計、製作をいたします。

(環境省)
「平成19年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」対象技術の評価結果等について
 http://www.env.go.jp/press/10273.html

(静岡県)
【しずおかの元気な企業】土と環境の病院 株式会社エコアップ
 http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-510/genki/gyosyu/kakusya/30_ecoup.html

(社団法人 静岡県環境資源協会)
ダイオキシン類の土壌汚染浄化対策
 http://ecomart.pref.shizuoka.jp/case/jirei-ecoup.html