六価クロム溶出試験

配合土の六価クロム溶出試験

 1. セメント及びセメント系固化材を使用した配合土から、条件によっては六価クロムが土壌環境基準を超える濃度で溶出するおそれがあるため、配合土について六価クロムの溶出試験を行なう必要がある。
 セメント及びセメント系固化材は、セメントを含有成分とする固化材で、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、セメント系固化材、石灰系固化材をいう。

試験方法 通称 試験の対象
1 配合試験 セメント及びセメント系固化材と原地盤内の土と混合して施工される地盤改良を対象とする
2 施工後試験 火山灰質粘性土を改良する場合
試験方法1の結果に関わらず実施する
3 タンクリーチング試験 改良土量が 5,000m3程度以上または改良体本数が 500 本程度以上の改良工事のみ試験方法2の結果最も高かった箇所について実施する

試験方法1及び2
 <1> 試料(単位g)と溶媒(pH5.8〜6.3)(単位ml)とを重量体積比10%の割合で混合し、かつ、その混合液が500ml以上となるようにする。
 <2> 調製した試料液を常温(おおむね20℃)常圧(おおむね1気圧)で振とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm〜5cmに調整したもの)を用いて、6時間連続して振とうする。
 <3> 得られた試料液を10分から30分程度静置後、毎分約3,000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とする。


試験方法3
 <1> 施工後のサンプリング等で確保していた試料から400g 程度の供試体を用意する。供試体は環境庁告示46号の溶出試験のように、土塊や団粒を2mm 以下に粗砕せず、できるだけ塊状のものを用いる。
 <2> 溶媒水として純水を使用する(純水の初期のpHは5.8〜6.3 とする)。
 <3> 非金属製の容器を準備し、採取試料400g 程度を容器内に置く。その後、所定量の溶媒水(固液比1:10、試料の乾燥重量の10 倍体積の溶媒水= 4L 程度)を充填し、供試体のすべてが水中に没するよう水浸させる(水浸の際にはできるだけ供試体の形状が変化しないよう注意する)。
 <4> 容器を密封後、20℃の恒温室内に静置する(この間、溶媒水のpH 調整は行わない)。
 <5> 水浸28日後に溶媒水を採水し、濃度測定に必要な分量を採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターにてろ過し、六価クロムの濃度測定を行う(JIS K0102の65.2)。


セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要領(案)

2. 固化材と混合した土壌の六価クロムの基準値が0.05mg/Lなのは何故か
 <1> 土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年8月23日環境庁告示第46号)で六価クロムの基準値が0.05mg/L以下に規定された。
 <2> 通達「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」とその運用(平成12年3月24日付、旧建設省(現国土交通省))が出され、公共工事では地盤改良等を行う場合、施工前に対象となる土と固化材を混合した試料の溶出試験を行い、土壌環境基準を満足する適切な配合を選定することになった。

3. 計算値が0.05mg/Lを超えている場合の六価クロム報告値について
 土壌環境基準では数値の取り扱いについては記載がないが、「公共用水域水質測定結果の報告について」(平成5年3月29日公布環水規80号)に「報告下限値の桁を下回る桁については切り捨てる」「有効数字を2桁とし、3桁目以下を切り捨てる」とある。「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン」(平成22年7月)にも「有効数字を2桁とし、3桁目以下を切り捨てる」とある。
 従ってエコアップでは六価クロムの報告値を、定量下限値(0.02mg/L)を下回る桁については切り捨て、有効数字を2桁とし、3桁目以下を切り捨て、としている。計算値が0.051mg/L〜0.059mg/Lの場合でも、報告値は0.05mg/Lである。

再生材の六価クロム溶出試験

 セメントは水和反応により微量成分を取り込んで固定する能力があるため、コンクリート試料からの六価クロムの溶出は問題にならない。しかし、供用期間の長い構造物は、次第に中性化する。中性化とは、空気中の炭酸ガス[CO2]の作用により、コンクリート表面に存在する[Ca(OH)2]が徐々に炭酸カルシウム[CaCO3]となり(炭酸化し)、pHが低下する減少である。反応式は、[Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O]である。このため、セメントの微量成分を固定化する能力が失われ、六価クロムが溶出する。再生材はコンクリートの破砕により、比面積が著しく増大しているため、六価クロムも溶出し易くなるのである。